あれ
「PKMSのページの初期表題をAIで自動生成」とか考えんではないが、情報管理の手触りとして本当に機能するのかは未知数だ。
利用者自身が表題を考えることによって深まる思考もあるだろうし、利用者自身が表題を考えたということによってその情報が身体化するというのもある。
あれ
Microsoft Loopファーストインプレッション
ついにMicrosoft Loopのプレビューが開始された。Microsoft365の法人プランであれば管理者が有効化しないといけないが、Microsoftの個人アカウントであれば特に設定しなくても使うことができる。
情報整理機能は貧弱
ページ内に他のページへのリンクを張るには、左のパネルか、左上の共有ボタンからリンクをコピーして貼り付ける必要がある。今時のイケてる知識管理システムであれば、Ctrl+kを押せばその場でほかのページへのリンクを張ることができるが、そうはなっていない。左のパネルからドラッグアンドドロップでリンクを追加することもできない。また、バックリンク機能も無い。ページの数が増えると管理に苦しむだろう。
今後、大規模言語モデルを用いたチャットボット機能(Copilot)が使えるようになれば、そこからいろいろと整理ができるようになるかもしれない。
左のパネルにはページの一覧が表示され、典型的なアウトライナー型(ツリー型)の表示になっている。非終端ノードもページとして使える。ConfluenceやNotionで見られる形態だ。
表機能はNotionほど尖ってはいないが、Excelよりはかなり進歩した
ページ内に表を作ることができる。行・列の入れ替えや追加は簡単にできるようになっている。やっとMacのメモアプリに追いついた感じだ。ただ、Notionのように個別の要素を一つのページとして表示したりすることはできない。
ドラッグアンドドロップで行や列を入れ替えられる。
Loopコンポーネントの埋め込みは取り扱いが難しい
Microsoft Teamsのチャットや、ほかのLoopページにLoopページの全体か一部をLoopコンポーネントとして埋め込める機能は、かなり取り扱いが難しい。
この機能はトランスクルージョンと同じだとみなすことができ、トランスクルージョンは下記の通り扱いが難しいことが指摘されている。
常に破綻しないように気をつける必要がある
Bの本文を変更すると、Aに読み込まれるBのパーツが破綻する
全体図
感想
NotionやConfluenceと比べれば「おもちゃ」だ。できることが限られ過ぎている。その割に取り扱いの難しい高度な機能が作られている。
一旦Loopコンポーネントの埋め込みのことを忘れると、できることが限られているので新しく使い始める人には使いやすい。後発のTeamsがビジネスチャットで優位を取っていることから見られるMicrosoftの営業力ならば市場を席捲する可能性もある。Microsoft365のバンドルも大いに機能するだろう。どう売り込んでいくのか注目したい。
今後の機能追加にも期待だ。トランスクルージョンが最初から実装されている目玉であることから、情報管理に関して知見の深さが垣間見る。また、相当な野心も感じられる。アレが無いコレが無いという状況も、今後の開発で解消されていくだろう。
輪郭法による語句駆動からの脱却
以前、メモそのものが知能増幅という内容の文章を書いた。では、なぜ輪郭法が知能増幅として特筆に値するのだろうか。
メモそのものが知能増幅であり、単純なメモによる知能増幅には制約があるのであれば、輪郭法はその制約を克服していると言える。では、何が制約になっているのかを考えてみたい。考えられる要素は、読む(探す)速度・書く速度・記録容量の三つだ。この中で制約となっているのは読む速度である。その理由を以下に示す。
まず、考えたこと・経験したこと・その他なんでもを書くには、殆ど計算機械の容量は無限と言える。『ゼロ秒思考』で書かれている通り、多くの人が1日に書ける文章量は1000文字(20文字5行10枚)程度だ。これ以上のことを思考している人間は希だと言える。この文字数であれば、手書きであっても、情報を書き出すだけなら十分高速だと言える。よって、残りの読む速度が制約となる。
読む速度を早くすれば良いかというとそうもいかない。人間、読む速度には限界がある。そのために、読むこと探すことを想定して書くわけであるが、これにはかなり労力がかかる。読むこと・探すこと を想定して書く場合、似た情報は近接して配置する必要がある。しかし、情報を1列に並べた場合(情報をリストにした場合)、ある情報を似た情報に近接して配置するには、リストの要素をすべて見る必要がある。
これを解決する素朴な方法としては分類するという方法が用いられるが、「この情報はどっちに分類すればいいか分からない」といういわゆるこうもり問題が生じる。
こうもり問題の克服のために、ネットワーク構造を用いた情報管理が考えられる。その一つとして、情報に名前を付け、その名前によってリンクを張る、Wikiのような構造が挙げられる。デライトでは、語句輪結(キーワードリンク)と呼ばれている。この語句輪結を用いることで、ある情報を複数のカテゴリーに属することが可能となる。また、ネットワーク構造は情報を探すのが大いに簡単になる。求める情報と似た情報からさらに似た情報へ移動を繰り返すことで、高速に情報を探すことが可能となる。この情報を探す方法は芋蔓検索と呼ばれている。
しかし、語句輪結にも課題がある。それは語句輪結は無名の概念を扱えないことだ。
語句輪結は無名の概念を扱えないという問題について考える。その名の通り、語句輪結は語句(キーワード)によってネットワーク構造を成している。その特性から、あらゆる情報(ページ)には名前を必要とする。名前を付けなければリンクを張ることができず、リンクを張ることができなければネットワーク構造を構成することができない。この特性によって、思考の途中で生じる多くの情報について「予め命名する」という作業を必要とする。命名が必要な場面について列挙すると、「語句の間に概念がスペクトラム状に存在し、その合間に存在する概念について記述したい」、「まだ名前の無い新しい概念について記述したい」、「ある体験について記述したい」などが挙げられる。
概念に命名するという作業を考えたとき、その概念についてある程度情報が集まってから命名する方が楽である。しかし、語句輪結では命名無しに情報を書くことができない。したがって、語句輪結では命名が先か、情報の記述が先か(鶏が先か、卵が先か)という問題が生じる。そのために、安易な解決方法として「既存の命名された概念に対して追記する」という行動が優位となりやすい。それ故に、語句輪結は「網目が大きくなる(粗くなる)」、「一つのページが大きくなる」という特性を持つ。「語句輪結は網目が大きくなる(粗くなる)」という特性は「大きすぎるリンクの問題」をも引き起こす。客観性を重視するWikipediaではこれらの特性が顕著となる。
輪郭法では輪郭(情報・概念)同士を直接結びつけることが可能となっている。この特性により、輪郭には名前が不要で、命名することなしに概念について情報を記述していくことができる。つまり、ありとあらゆる概念について、後出しじゃんけんのように、「情報が集まってから命名する(名前を後から付ける)」ことが可能になる。これが輪郭法を応用したメモツールであるデライトが「なんでもメモ」というキャッチコピーを冠している理由だと思われる。
以上の特性により輪郭法は、ネットワーク構造が持つ情報探査の容易性を有しながら、語句輪結が持つ無名の概念を扱えないという欠点を克服している。
2022年5月2日 初稿
2022年7月3日 微修正
2022年10月8日 表題追加・微修正
ゲスト回BC045『Obsidianでつなげる情報管理術』
あれ
TeamsのWikiに語句輪結がないことに気づいて驚いた。
Personalだとページやセクションのリンクすら取得できないことに気づいてさらに驚いた。
どうやって情報を扱えばいいんだこれ
Wikiだと思うから使いにくいのであって、ただのメモ帳と思った方がよさそうだ。メモ帳か付箋アプリでいいじゃん。
ただ思想として、また利用者層として、「○○記法」みたいなものを使わせたくないというのは分からなくはない。リテラシーが高くないとそういう物が機能しない可能性はある。